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漢方のはなし その4 ~葛根湯の意外な効能~

2020年9月19日

葛根湯といえば、『かぜに葛根湯』で有名ですがそのほかにも意外な効能があります。
シリーズ『漢方のはなし』第4回は葛根湯について、書いていきたいと思います。


今回の内容は


①『かぜに葛根湯』の正しい使い方
②葛根湯の意外な効能


以上について解説したいと思います。この記事を読んで、葛根湯の正しい使い方を知っていただければと思います。


<『かぜに葛根湯』の正しい使い方>
葛根湯といえば、風邪薬のイメージだと思いますが具体的にどんなときに使うのがよいかご存知でしょうか?
一般に風邪の引き始めに服用するとされていますが、実はポイントとなる症状があります。それは…


発熱、悪寒、首筋の凝り、自然発汗なし


これが当てはまる時期に飲むと最大限の効果を発揮します。具体的にはじんわりと汗をかくまで、数時間おきに温かいお湯などで服用します。『じんわりと汗をかくまで』ここが服用のポイントです(東洋医学用語で『微似汗』といいます)。

漢方では発汗は治癒に向かうための重要な現象と考えられています。風邪の引き始めの発熱・悪寒は体温を上げて抗病反応を高める過程のものなので、葛根湯などの『麻黄』という体を温める生薬を含んだ処方を服用することでより早く抗病反応を高めることが可能になります。体を温めた結果、自然発汗が起きることで解熱、治癒に向かうことになります。
この理屈から考えると、風邪の初期の発熱・悪寒があるときに解熱剤で無理やり熱を下げることは、体温が十分に上がる前に発汗してしまうため抗病反応を高めることができず却って症状が長引いてしまう可能性があります。
熱は無理やり下げるのではなく、自然に発汗するところまで上げてあげることが重要なんですね☆

ただし、上記の症状を呈する方はお子さんや比較的体力のある方がほとんどで、虚弱体質の方には葛根湯は向いていません。虚弱体質の方は皮膚の保温作用が弱く体温が十分に上がりきる前に自然発汗してしまうため、葛根湯で急に体温を上げるより桂枝湯という徐々に体を温めるお薬のほうが向いています。ひとりひとりに体質に応じた使い分けが重要です。漢方薬は薬局でも買えますが、せっかく使うなら自分の体質に合う薬を効果的に使っていただきたいので、薬局であれば薬剤師、当院におかかりでしたら私に気軽に聞いていただければと思います。


<葛根湯の意外な効能>
実は葛根湯は風邪の初期のほかにも意外な効能があります。
上記の風邪の時の使用のポイントの中にある『首筋の凝り』ですが、葛根湯には後頭部から首筋、背中にかけての筋肉の緊張をほぐす作用があり、肩凝りやそれに伴う頭痛(筋緊張性頭痛)にも有効です。また葛根湯に含まれる『麻黄』という生薬には抗アレルギー作用があることがわかっており、蕁麻疹にも応用されます。その他乳腺炎にも有効とされる場合があります。このように、葛根湯は様々な効能があるので、『葛根湯医者』というなんにでも葛根湯を出す医者の話が落語になっていたりもします。
漢方薬の特徴に『異病同治(いびょうどうち)』という言葉がありますが、一つの漢方薬で様々な疾患に対する効能を持つわかりやすい例だと思います。


今回は『葛根湯』について解説しました。医療用漢方製剤は148処方あります。そのすべてを解説するのはかなりの時間がかかりますが、よく使うものから少しずつ解説していければと思います。


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