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漢方のはなし その8 ~花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する処方~

2023年1月26日

COVID-19第8波の影響で発熱外来、後遺症外来ともに忙しい日々が続いておりブログ更新が滞ってしまい申し訳ありません。1月も下旬に入り漸く発熱の問い合わせも落ち着いてきて少し時間が取れるようになってきたため、久々に『漢方のはなし』を書いていきたいと思います。

先日更新したブログにも書きましたが今年はスギ花粉の飛散量が多い(前年の2倍以上)ことが予想されており、例年より症状が強く出る方が多い可能性があります。

そこで、第8回の今回はアンケートでも要望のあった『花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する処方』について書いていきたいと思います。

アレルギー性鼻炎の一般的な治療としては原因となっている物質(アレルゲン)の回避が基本であり、対症療法として薬物療法や手術療法があります。根治的治療としては当院でも行っているアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)があります。

薬物療法では抗アレルギー薬(いわゆる抗ヒスタミン薬など)やステロイド点鼻薬などが症状に合わせて使われています。漢方薬は上記薬剤が副作用(主に眠気など)で使用できない場合や使用しても十分に効果が得られない場合などに用いられます。

アレルギー性鼻炎に用いる漢方薬は大きく分けて生薬として『麻黄』を含むものと含まないものに分けられます。
『麻黄』には血管収縮作用や抗ヒスタミン作用があるとの報告もあり、アレルギー性鼻炎に有効性の高い生薬と考えられています。しかし一方で副作用のリスクもあり主な副作用としては胃痛、胃もたれ、食欲不振といった消化器症状、血圧上昇、尿閉、眼圧上昇、不眠、動悸などがあります。そのため高血圧、虚血性心疾患、前立腺肥大、緑内障、甲状腺機能亢進症がある方は症状が増悪する可能性があり、特に高齢な方には使いづらい生薬です。

麻黄を含む方剤には小青竜湯、麻黄附子細辛湯、越婢加朮湯などがあり、含まないものとしては苓甘姜味辛夏仁湯や五苓散が挙げられます。四診によって虚実や寒熱といった東洋医学的概念を用いて使用する方剤を決定します。

抗アレルギー薬内服のみでは症状が抑えきれない方や、眠気等の副作用で抗アレルギー薬の内服が難しい方は漢方薬でも治療ができますので、ぜひ一度ご相談ください。

当院の漢方治療についてはこちらをご覧ください

過去のシリーズ『漢方のはなし』はこちらのリンクから
漢方のはなし その1 ~東洋医学と西洋医学の違い~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その2 ~東洋医学の診察法『四診』について~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その3 ~なぜ漢方を勉強するようになったか~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その4 ~葛根湯の意外な効能~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その5 ~漢方薬の副作用について~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その6 ~アンケートに寄せられた質問にお答えします~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その7 ~更年期障害に対する処方~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)