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漢方のはなし その7 ~更年期障害に対する処方~

2021年12月19日

シリーズ『漢方のはなし』の更新がだいぶ滞ってしまいました…
そうこうしているうちに、アンケートの回答でのリクエストがたまってしまい回答いただいたのになかなか記事にできておらず申し訳ありません。

第7回の今回はアンケートのリクエストにもあった、更年期障害に対する漢方治療について書いていきたいと思います。


今回のブログでは以下の点について解説します。


1、更年期障害とは
2、更年期障害で頻用される漢方薬


1、更年期障害とは


<定義>
閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。
                             ~日本産婦人科学会HPより~


<症状>
1、のぼせ・ほてり・発汗
2、冷え
3、イライラ・不安感・不眠
4、手足のしびれ・こわばり
5、抑うつ気分・意欲の低下  など


<治療>
治療はホルモン補充療法(HRT)が最も有効とされており、日本では代替療法として漢方治療が頻用されています。


2、更年期障害で頻用される漢方薬


更年期障害に対して用いられる漢方薬のうち代表的なものとして当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸があります。今回はこの3つについて簡単に解説したいと思います。
この3つは婦人科3大処方とも呼ばれ、更年期障害以外にも様々な女性ならではの症状に頻用されます。今回のブログを読んでご自身に合いそうなものがありましたらお気軽にご相談ください。


①当帰芍薬散
当帰芍薬散が合う方の特徴は疲れやすく、冷え症のある方で、頭痛、めまい、肩凝り、足のむくみなどに効果があるとされます。イメージとしては体を温めて、血の巡り、体の水分バランスを改善するものです。漢方の専門用語では虚証の瘀血(おけつ)、水毒の方に用います。


②加味逍遙散
加味逍遙散が合う方の特徴は虚弱体質で冷え症のある方で、肩凝りや、のぼせ(ホットフラッシュ)不安などの精神症状、便秘のある方に効果があるとされます。酒さと呼ばれる顔の赤み、ほてりの出る慢性皮膚疾患にも効果があるとされます。イメージとしては体を温めて、血の巡り、水分バランスを改善し、精神症状を安定させるものです。漢方の専門用語では虚証~中間証の瘀血、水毒、気逆の方に用います。


③桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸が合う方の特徴は体格のしっかりした元気な方で、頭痛、めまい、のぼせ、肩凝りのある方に効果があるとされます。イメージとしては体を温めて、血の巡りを改善するものです。漢方の専門用語では実証の瘀血、気逆の方に用います。


以上のように、一言に更年期障害の処方といっても体質や症状によって使い分けができるのが漢方薬の利点です。この3つ以外にも更年期症状に用いる漢方薬はありますので、自分の症状が当てはまらないといった方も一度お気軽にご相談いただけたらと思います。

末盛内科クリニック
医師 伊藤智康





過去のシリーズ『漢方のはなし』はこちらのリンクから

漢方のはなし その1 ~東洋医学と西洋医学の違い~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その2 ~東洋医学の診察法『四診』について~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その3 ~なぜ漢方を勉強するようになったか~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その4 ~葛根湯の意外な効能~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その5 ~漢方薬の副作用について~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)

漢方のはなし その6 ~アンケートに寄せられた質問にお答えします~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)