シリーズ『漢方のはなし』第6回はこちらのシリーズ記事を開始した当初より皆様にアンケートを行っていた中でいくつか質問をいただいたので今回はその質問にお答えする回にしたいと思います。
では早速、ひとつずつお答えしたいと思います。
Q1、更年期障害について 特にホットフラッシュや発汗にきく漢方薬はありますか?
A、あります。漢方薬の場合、体質や病態によって合う処方が変わります。
更年期障害は閉経前後5年間の”更年期”といわれる時期に現れる、器質的疾患に起因しない多種多様な症状を呈する病態と定義されます。更年期障害は一種の症候群で症状は300以上あるといわれています。その中でも有名な症状としてのぼせ・ほてりや発汗といったいわゆるホットフラッシュがあります。治療としてホルモン補充療法がもっとも有効ですが、日本では漢方薬も頻用されています。
漢方薬は個人の抱える病態や全身状態によって選択するべき薬が変わるため、一言に『これが効く!』とは言い切れませんが、代表的な処方の一つとして『桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)』を紹介します。
桂枝茯苓丸は発作的なのぼせ・発汗・動機・頭痛や不安焦燥感といった『気逆(キギャク)』という病態に有効な処方です。漢方の婦人科3大処方の一つで、『瘀血(オケツ)』という病態の月経関連症状に対しても用いられます。
その他にも病態や全身状態に応じて様々な処方がありますのでもし漢方薬を試してみたいという方はぜひ一度ご相談ください。診察の上、状態に合った適切な処方を提案させていただきます。
Q2、長年つきあっている症状 ふわふわする目眩を緩和させる自分に合った漢方薬あるのであれば、知りたいです!
A、ふわふわとした慢性のめまいには内耳という耳の奥の聴覚や平衡感覚を司る部分の障害によるめまい(内耳性めまい)以外にも加齢、心因性、起立性低血圧などさまざまな原因があります。発作の誘因のとして疲労やストレス、月経や更年期障害などもあるため病態に抱える病態に応じたアプローチをすることで漢方薬が有効となるケースも多いと考えます。めまいは一般に漢方医学でいう『水』の異常、水毒・水滞として表現され、五苓散(ゴレイサン)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)や半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)といった利水剤を用いて治療を行います。上記のように慢性の病態の場合にはその他の要因が複合している場合もあるため病態に応じた処方の選択を行います。
Q3、季節的な病気で、よく使われる漢方薬とかあるのでしょうか?
A、花粉症、夏バテ対策、冬の手足の冷え、梅雨時にひどくなる頭痛など季節ごとの悩みに使われる漢方薬があります。
スギ花粉に対するアレルギー性鼻炎には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)などが用いられます。夏バテ対策には清暑益気湯(セイショエッキトウ)や補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、冬の手足の冷えには当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)、梅雨時にひどくなる頭痛に五苓散(ゴレイサン)など季節ごとに起きる症状にも対応した処方があります。
Q4、漢方服用期間中、頭痛や風邪っぽい時に葛根湯、喉症状に龍角散などの様に、市販薬を頓服みたいに使用して良いんでしょうか?
A、構いません。ただ体調がすぐれず葛根湯などを服用される場合は元々定期的に内服されている漢方薬は体調が戻るまで一時的に休薬していただいたほうがいい場合もあります。休薬の判断については処方されている医師に確認して下さい。また、葛根湯には麻黄という生薬が入っており高齢な方やもともと体力があまりない方が服用すると胃腸障害などが起こる場合がありますので、あまり体力のない方、高齢な方の場合は香蘇散(コウソサン)や桂枝湯(ケイシトウ)といったあまり体力に自信のない方でも無難に飲んでいただけるお薬を選んでいただくのがよいかと思います。
葛根湯や漢方の副作用については以前の記事(『漢方のはなし その4~葛根湯の意外な効能~』、
『漢方のはなし その5~漢方薬の副作用について~』)をご覧ください。
以上今回は『漢方のはなし』のアンケートに寄せられた質問にお答えしてみました。
また質問が集まりましたらこのような回も設けてみたいと思いますので、質問がある方はアンケートの自由記入欄にお気軽に問い合わせください。
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過去のシリーズ『漢方のはなし』はこちらのリンクから
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漢方のはなし その2 ~東洋医学の診察法『四診』について~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)
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漢方のはなし その4 ~葛根湯の意外な効能~ | 千種区覚王山の内科・消化器内科・漢方内科|末盛内科クリニック (suemori-clinic.com)
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