漢方薬の副作用ってどんなものがあるかご存じでしょうか?
一般に漢方薬は西洋薬に比べて副作用が少ないというイメージがあるかと思いますが、漢方薬もれっきとした薬剤ですので頻度は少ないとはいえ注意すべき副作用があります。
今回の『漢方のはなし その5』では漢方薬の副作用について書いていこうと思います。
漢方薬の副作用はその薬を構成する生薬によっておこるものです。そのため、処方されている薬剤ごとにどのような副作用に注意すべきか異なります。今回は注意すべき副作用・生薬からみた副作用について解説していこうと思います。
<注意すべき副作用>
1、偽アルドステロン症
偽アルドステロン症は漢方エキス製剤のおよそ7割に含有される生薬である甘草によって起きる副作用です。
偽アルドステロン症は甘草の主要成分であるグリチルリチン酸によって起こるもので、副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンが過剰分泌されていないにも関わらず、過剰分泌されているかのような病態をしめし、血圧上昇、体重増加、むくみ、カリウム喪失をきたすものです。
甘草の含有量が多いものほど注意が必要ですが、エキス製剤に含まれている甘草の量はほとんどが3g以下のため問題になることは多くありません。ただ、併用する薬によっても起こる頻度が高くなる場合があり、甘草を含有する薬、グリチルリチン酸を含む薬、一部の利尿薬との併用には注意が必要です。
2、間質性肺炎
間質性肺炎は発熱、空咳、呼吸困難などの症状を呈する疾患で発症機序は不明な点が多いが様々な薬剤で起こりえると言われています。漢方薬では小柴胡湯によるものが有名ですが、柴胡や黄芩(オウゴン)を含む薬剤との関連が示唆されています。希な副作用ではありますが、早期に適切な処置を行わないと重篤化する場合があるため、服用中に発熱、空咳、呼吸困難等の症状が出現した場合は早めにご相談ください。
3、皮疹
薬剤アレルギーの症状として発疹、蕁麻疹などの皮膚症状が出ることがあります。様々な生薬で起こる可能性がありますが、特に桂皮、人参、地黄などで起こしやすいとされています。
4、上部消化管症状
麻黄、地黄、当帰、川芎、石膏、山梔子、酸棗仁、ヨクイニンなどを含む処方を用いる場合に胃の不快感やもたれ、食欲低下、胃痛、胸やけ、悪心、嘔吐といった上部消化管症状が出ることがあります。発症には個人差がありますが、もともと胃腸が弱い方などは注意が必要です。ただ重い副作用ではないため服用時間を食前から食後に変えたり、服用量を減らすことで対処が可能です。
5、肝機能障害
非常に頻度は少ないですが、服用後1-2週で発症することが多いとされ、柴胡や黄芩を含む処方での発症が報告されています。
<生薬からみた副作用>
1、麻黄による副作用
麻黄は注意が必要な代表的な生薬であり、特に高齢の方や元来胃腸の弱い方では副作用が起こりやすいとされています。主成分であるエフェドリンに交感神経興奮作用などがあり、その作用に起因する不眠、動悸、頻脈、血圧上昇、発汗、排尿障害が出る可能性があります。
そのため心疾患を持つ方への投与は控えるべきとされています。また胃もたれなどの胃腸障害の原因になることもあります。
2、大黄による副作用
大黄は下剤としての作用があり、効果に個人差があるため少量でも腹痛、下痢をきたすことがあります。
3、附子による副作用
附子は冷えや痛みに用いる生薬ですが、神経症状として動悸、のぼせ、口や舌のしびれ、悪心などを起こすことがあります。お子さんでは副作用が起こりやすいため慎重に投与する必要があります。
4、山梔子による副作用
山梔子は婦人科系で頻用される加味逍遥散などに含まれる生薬で、5年を超えるような長期内服によって腸間膜静脈硬化症という稀な疾患を発症することがあります。山梔子を含む薬剤を長期に内服している時に腹痛や下痢、便秘、腹部膨満が繰り返し現れるような場合にはこの合併症を疑う必要があります。
こうやって挙げてみると漢方薬にも様々な副作用が起こりえることがおわかりになるかと思います。
ただ頻度は少ないですし、『副作用があるから危険だ』と思う必要はありません。処方は東洋医学的診察をもとに患者さん一人ひとりの体質や状態をみた上で選びますので、頭の片隅に置いていただく程度で問題ないものとは思います。また処方の際に注意すべき副作用については処方の際にお話しておりますので、気になる方は遠慮なくお聞き下さいね。
以上簡単ではありますが漢方薬の副作用について解説しました。
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