11月に入り、発熱外来を受診される方でインフルエンザ陽性となる方の割合が増えてきています。学校では学級閉鎖や学年閉鎖になっているところもあり、まさにインフルエンザが猛威をふるっている状況です。
ここ数年はCOVID-19の流行がメインとなっていたせいか、例年インフルエンザが流行する時期にもインフルエンザ陽性となる方はほとんどいませんでしたが、COVID-19の5類移行、感染対策の緩和、マスクを外す流れの中で再度インフルエンザが流行する流れができたのではと私は考えています。
発熱外来をしていると時に以下のような問い合わせがあります。
『まだ熱は出ていないけど周りで流行っているから心配で検査してほしい』
『さっき熱が出たからすぐに検査を受けたい』
しかし、インフルエンザを正確に診断するにはタイミングがとても重要です。
今回は、『インフルエンザかも…』と思ったときの、受診に適したタイミングについてお話ししたいと思います。
インフルエンザは抗原検査で判定します。抗原検査はウイルスの抗体を用いてウイルス特有のタンパク質(抗原)を検出する検査です。ウイルス特有のタンパク質(抗原)が鼻腔などから拭った検体から検出された場合に陽性となりますが、ある程度のウイルス量がないとタンパク質を検出するには至りません。そのため発症からある程度時間がたたないと感染していたとしてもタンパク質が検出されない『偽陰性』となる可能性があります。
では、インフルエンザ抗原検査を行うのは発症してから何時間後が適切なのでしょうか?
日本でインフルエンザ抗原検査の最適な時期について検討した論文によると、発症から12時間~48時間の間が抗原検査を行う上で最適とされています。
論文ではインフルエンザ抗原陽性となった方の中で、発症12時間以内に検査した17名のうち初回検査陰性で発症12時間後以降に再検査して陽性となった方が4名おり、約2割の方が初回検査偽陰性でした。対して発症12時間後以降に検査した方には偽陰性となる方はいなかったという結果でした。
ただ、治療に関しては、なるべく早期に抗インフルエンザ薬を投与したほうが症状を早く抑えたり、入院する症例を減らすことができることが分かっているため、受診のタイミングは発症から12時間以降でなるべく早く、というのがベストではないかと考えます。
症状が出てすぐの受診は他の疾患も含め診断が難しいですし、また『学校でインフルエンザが流行っている』『家族がインフルエンザになった』といった場合でも症状がない方の診断は抗原検査では難しいため、症状が出てからご相談ください。
まとめ
・インフルエンザかも…と思ったら、症状が出てから12時間後以降のなるべく早いタイミングで受診しましょう。
・周囲にインフルエンザの方がいても無症状の場合は抗原検査での診断はできないので、症状が出てからご相談ください。