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片頭痛に対するCGRP製剤のご案内

2023年4月16日
2021年より、片頭痛予防の注射薬としてCGRP製剤が日本でも承認されました。

片頭痛の原因は未だに解明されていませんが、近年の研究で三叉神経から脳内の表面に向かって放出される特定のたんぱく質が関係しているとする「三叉神経血管説」が有力であるとされています。このたんぱく質はカルシトニン遺伝子関連ペプチドといい、英語でCalcitonin Gene-Related Peptideと表現されますが、その頭文字を取ってCGRPと呼ばれています。
なんらかの刺激によって三叉神経から脳の表面にある硬膜に向かってCGRPが放出され、硬膜が炎症を起こすことで頭痛や悪心・嘔吐、眠気を自覚すると説明されています。

CGRP製剤と実際の治療

CGRP製剤は頭痛の原因となっていると考えられるCGRPを無効化する薬です。

本邦では、CGRPそのものを無効化する”抗CGRP抗体薬(エムガルティ、アジョビ)”とCGRPを受け取る”受容体”を阻害する”抗CGRP受容体抗体薬(アイモビーグ)”の2種類の作用機序の製剤が承認されています。

この製剤には使用方法を定めた厚生労働省の適正使用ガイドラインがあります。当院でもガイドラインを遵守して治療を行っています。ガイドライン上、以下の条件にすべて合致する方は保険適用でこの治療を受けることが可能です。

  • 前兆の有無に関わらず、片頭痛の発作が月に複数回以上発生していることを医師が確認しているか、慢性片頭痛であると診断されていること
  • 緊張性の頭痛ではなく片頭痛が、過去3か月の間、1か月に4日以上発症している
  • これまでの片頭痛予防薬の効果が十分に得られていないか、副作用などの事情で継続して服用できない
  • 食生活、睡眠、生活のリズムなどの生活指導や、ストレス状況からの解放のための薬物によらない療法を実施し、また片頭痛の急性期の治療を十分に実施しているのに、しっかりとその効果が得られない
  • 過去1年以内に脳の検査を受けて画像上異常な所見が見られない(MRIは当院から提携する検査施設のある医療機関を紹介しています)。

実際の治療は1か月に1回皮下注射を行います。3か月おきに治療効果を判断します。最初は注射の都度来院いただきますが安定した効果が得られている方はご希望であれば自己注射の方法を指導させていただき、在宅自己注射での継続も可能です。費用については製剤ごとで若干異なりますので直接お問い合わせください。
予防薬内服でのコントロールが難しい慢性的な片頭痛の方はぜひ一度ご相談ください。
また、基幹病院ですでに治療を導入されており自宅近くでの継続を希望される方も対応いたしますのでご相談ください。

末盛内科クリニック
医師 伊藤智康